「凍える牙」(乃南アサ)あらすじ紹介ネタバレ有。前代未聞の犯人の正体とは?

ミステリー
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凍える牙(乃南アサ)

おはようございます、最近警察小説にどっぷりはまっているみかんです。

本日は、有名すぎる警察小説なのに未読だった「凍える牙」をご紹介します。

 


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ざっくりあらすじ(ネタバレ無)



深夜のファミリーレストランで突然男が炎上した。

不可解な炎上の仕方に荒れる帳場。

数日後、無残にも喉仏を食いちぎられた死体が発見される。

異様な二つの殺人事件を追う警視庁機動捜査隊刑事・音道貴子。

彼女の前に姿を現したのは想像を超える野獣だった。

私も、前情報として野犬?みたいなのは知っていたんですが、想像を絶する展開でした。

そんなばかな~と思っていた当初の自分を平手打ちです。

納得しかないし、胸がぎゅうっと締め付けられます。

警察小説ってなんとなく似通ってしまうものですが、(そんなに事件に多様性ない)こちらは唯一無二の事件です。

キャラもそれぞれもやもやをずっと抱えていて煮え切らない感じがリアルで良い!

ぜひともこの衝撃はご自身で味わっていただきたいので、

まだ未読の方はネタバレ読むのやめたほうがよいです!

一回読んだけど、どんなんだったか忘れた!という人!どうぞ、思い出して震えましょう。



ざっくりあらすじ(ネタバレ有)



ファミリーレストラン炎上事件



深夜ファミリーレストランで一人の男が突然炎上する。

なぜか上半身だけが異様に丸焦げで下半身は比較的無傷だった。
足の付け根には獣に嚙まれたような跡が遺されていた。


警視庁機動捜査隊の音道貴子は立川署の刑事、滝沢とコンビを組み捜査にあたる。



現場捜索により、ベルトから発火したことが推察された。

また、科捜研の調査の結果で使われた薬剤が判明する。

「過酸化ベンゾイル」

強い酸化作用があるので、小麦粉やロウ、医薬品や化粧品などの原料として広く用いられるものだが、99%以上の純度の高いものは国内では入手不可能とされている。
通常は油や水と混ぜて50%のペースト状で取り扱われているが、自然乾燥させ、メタノールに一晩漬けて、風で乾燥させれば乾燥粉末を得ることが出来る。

乾いた過酸化ベンゾイルは、103度で自発的に分解し火をつけると火炎放射器のような非常に強烈な炎の吹き出し方をする。

非常に不安定な化合物なので、衝撃、摩擦でも爆燃する。


丸焦げの遺体に比較的容易に手に入れることのできる過酸化ベンゾイルという手がかりでは
捜査は前に進まなかった。

数日後、一人の主婦の電話から身元が判明する。

菅原琢磨。本名、原照夫。

偽名を使い、炎上したファミリーレストランと同じビルでデートクラブを経営していた。
使っていた携帯も家もビルの賃貸もすべて別の女性名義だったため身元特定に時間がかかったのだった。
多くの女性のヒモのような生活をしながらも、デートクラブの高校生たちからは「琢にい」と呼ばれ兄のように慕われていたという原照夫。

怨恨の線もあまり見えてこない。

野獣噛み殺し事件



ファミリーレストラン炎上事件から数日後、深夜のベイエリアで堀川一樹(三二)が死亡しているのが発見される。

堀川は、首の左右に鋭い牙の痕、喉笛を大きくえぐり取られた形で首の骨も折れていた。

大型の野犬に襲われたのか、という見出しが新聞を賑わす。

その歯形が、原照夫の大腿部に付けられたものに酷似していたことから野犬の捜査も進める音道たち。

この堀川は、十数年前原照夫の六本木での遊び仲間だったことが判明する。

その後、新たに川崎で主婦が同じように殺害された。


調べたところ、ウルフドッグと呼ばれる大型犬がいることが分かった。

オオカミと犬を交配させた種で、オオカミの血が何%入っているかによって、また個によって性格が大きく変わるらしい。

ウルフドッグを販売する会社から販売先名簿を受け取り虱潰しにあたる警察。

また、これだけの大型犬を人を殺すように訓練できる人間、という点から警察犬訓練所の人間も捜査範囲に入れ始める。

ついに、以前山梨県警の鑑識課にいて警察犬の訓練を担当して、オオカミ犬を飼っている人間が浮上する。

高木勝弘。

12年前に山梨県警を退官してその後の居場所が分からなくなっていた。



新たな火災事件



昭島市で一軒家の火災が発生する。

重体で運ばれたのは笠原勝弘。その家の奥には頑丈で大きな鉄製の檻があり、犬用の太いリードなども残されていた。檻は開いており中は空だった。

また遺体も一つ発見される。
若い女性のものだった。

音道と滝沢は病院に運ばれた笠原の事情聴取を行う。

まだ意識も朦朧とする中、聴取にこたえていく笠原。



事件の真相



笠原は婿養子だったので高木と名乗っており、離婚して笠原に戻っていた。

笠原は疾風(はやて)という名でウルフドッグを飼っており、火災の際に咄嗟に檻を開けて逃がしていた。
死亡していた若い女性は笠原笑子。笠原の娘だった。

多くの警察官と同じく、いや警察犬の訓練を担当していたこともありそれ以上に多忙を極め家庭を顧みることが出来なかった。

末娘の笑子は学校に行かずシンナーや万引き、家出を繰り返すようになり依願退職した笠原は酒を飲み始め家庭内暴力をするようになり妻は二人の子供を連れて出て行ってしまった。

笑子は覚せい剤の慢性中毒による精神病で17歳のときに精神病院へ入院。
妊娠もしていたがその後流産していた。
その後8年間も閉鎖病棟に入院していた。
幼い子供に戻ってしまった笑子は、疾風が面会に来ることを殊の外喜んだ。

疾風も笑子のことを守ろうと、支えようとするようだった。


笠原は疾風を手に入れてから笑子をシャブ漬けにした連中に復讐を考え訓練していた。
それが原照夫、堀川一樹、主婦だった。

その原照夫の殺害に失敗したあと、同じビルに入っている健康器具を売る会社の小川という男が原照夫を殺害したことを知った笠原は小川に近づいた。
(小川が河原で何かを燃やす実験をしているところ、原照夫にベルトを渡しているところを目撃した)

笠原としては復讐相手である原を殺してくれて助かったという意味合いだったのだが、小川は自分が犯人であることを知られたために殺そうと考え、笠原を尾行して家を特定、過酸化ベンゾイルの入ったペットボトルを数個投げ入れて燃やしたのだった。


小川の動機



炎上したファミリーレストラン、原照夫のデートクラブと同じビルに入っていた健康器具の会社経営者だった。
大学卒業と同時に就職した食品メーカーの研究室で誰かの口車に乗せられて健康器具の開発をはじめ、脱サラ、会社設立、倒産の繰り返し。

夜逃げをするくらいなら、起死回生を狙うための金が欲しかったが、保険金しかなかった。
金額は少なくても確実に得ることを考えようとしたとき、会社の入っているビルに火災を起こすことくらいしか思いつかなかった。

放火だとバレると思ったので、動いているもの、生きているものに火をつければいいのではないかと考えた。

元々若い女の子をたぶらかして労せずして金を稼いでいる原が気に食わなかったので、自分が開発した過酸化ベンゾイルを入れた万歩計付きベルトを原にプレゼントしたのだという。



疾風の行方



笠原曰く、疾風は小川を追っているかもしれない。

音道は疾風がこれ以上人を殺さないようにしたいと並々ならぬ思いを持っていた。

白バイ優秀者の音道は、笠原宅に疾風が戻ってくるのをバイクでひたすら待ち続ける。
何日か夜が過ぎたある日、ついに疾風が姿を現す。

音道はバイクで疾風を追跡する。

一日で200キロ走ったという伝説も持つウルフドッグ、疾風もすさまじい速さで疲れ知らず、高速道路に侵入する。
高速道路を緊急通行止めにし、疾風とそれを追う音道のバイク。

この描写はわくわくを通り越して崇高なものを見るような感覚に陥りました。
誰もいない高速道路を走るウルフドッグとバイク。
こんなざっくりしたものだけだと現実離れしすぎて「おいおい」ってなるかもしれませんが、
さすがの乃南先生。
本当にリアルに想像出来ます。読んでください。



ついに疾風は小川が隠れる幕張までついてしまう。
最後の最後まで笠原の想いをくみ取ろうとした疾風。

麻酔銃で眠らされて警察犬舎に裁判まで保護されることに。
小川も逮捕された。

しかし、疾風はその後餌も水も全く摂ろうとせず、10日間もの間絶食のあと息を引き取った。

それはまるで自殺のようだった。

頑なな意思で点滴もさせなかった疾風。

犬ではなく、人間でもないが、限りなく人間に近しいものののような新しい存在だった。




小言



疾風ーーーーーー!!!!

こんなことありますか;;!!!

悲しすぎて悲しすぎて。疾風の笠原と笑子への想いが尋常ではなく。
ただの飼い主と飼い犬とは言えないウルフドッグと笠原たちの絆。

最初は「犬が人を殺す?いやいや~」と半ば舐めていました(爆)
でも、納得せざるを得ない疾風の気高さ、強さ。

疾風を誰よりも愛していた、大切にしていた笠原が人を殺すよう訓練する。
笠原がいなくなった後も小川を殺そうとする疾風。

音道も作中そうですが、読者までも魅了して話さない疾風。

疾風のことが頭から離れない…!!!

どうにもならない思いを抱えていた笠原を疾風が救ってくれたのかな。。
辛すぎる最後でした。

事件のあらましだけを覚書として残していますが、実際は音道と滝沢の難しすぎる関係がまた一味も二味もこの本を魅力的にしています。
女の私からすると「滝沢いい加減にしろよ!くそが!!」となってしまうんですが、音道は歯を食いしばりながら耐えます。
最後に良いバディ!とまでは言わないところがリアルで好きです。

警察内の因習、確執、どす黒すぎて鬱々とした気持ちにもなりますが、それがたまりません。

他にも面白すぎる警察小説をご紹介しています。

本当面白すぎてシリーズ全部すぐ読み終えてしまうのでぜひ!!↓
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