「太陽の坐る場所」(辻村深月)ネタバレ有あらすじ。描かれる人間の浅ましく醜い、けれども誰しもが持っている感情とは。

ミステリー
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太陽の座る場所(辻村深月)
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「太陽の坐る場所」という作品


流石の心理描写。人間の誰にも見せない、自分でも文字化するのが難しい感情を丁寧に激しく描写。

本ならではの叙述トリックもあり、読んでる途中で違和感を感じながらも最後までその違和感を解き明かせませんでした。


ネタバレです!嫌な方は読まないでください!!


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【あらすじ】

唯一、世界の全てだった教室。女王響子、その想い人清瀬。
十年後、クラス会で集まった私たちの話題は、同級生で活躍している女優キョウコだった。
同窓会に来ない彼女を何とか引っ張り出そうと画策する人間たちの物語。

半田聡美


美人。キョウコを直接誘う役割を押し付けられる。
誰にも言っていないが劇団で演技をしている。
有名になるのは本当は私だったはずなのに。
幸せになるのは私だったはずなのにという思いを抱えていた。

里見紗江子

地味。早熟で周りを見下していたからか周りから浮いていつも一人だった。
化粧気のない顔で映画会社で働いている。
貴恵、真崎と親友だった。

貴恵と真崎は付き合っていたが今はそれぞれ別の相手と結婚している。
そして紗江子は真崎と付き合っている。誰にも言えないがそれが全て。

真崎との肉体関係が、地味だと私を馬鹿にした女たちに勝ったと思える唯一の証だった。
しかし目を瞑っていた真実、真崎は仕事のために自分と付き合っているということから目を反らせなくなり、貴恵に真実と自分の汚い心をぶつけてしまう。

貴恵は真崎を殴って紗江子に会いに来てくれる。

水上由希


ファッションブランドでデザイナー、女優キョウコと親友だと周りに平気で嘘をつく。
他人よりも上に思われるための嘘には何の罪悪感もない。
自分のポジションを上げるために他人を平気で踏み台にする。

島津謙太


同窓会の幹事。
高校時代はイケてる奴らと連んでいたし、可愛い女子ともじゃれあえた。
卒業してから何かおかしい。
男子からも女子からも引かれてる。
こんなはずないと昔に囚われ同窓会に固執する。

真相

回顧部分に出てくる女王様、響子は、典型的なヒエラルキー最上位。

自分の気に入った可愛い子しか取り巻きに入れない、自分の好きな清瀬に少しでも関わったら潰す。

そうやってクラスを支配してきた。ただその支配も長くは続かず、リンちゃんの反逆で終わる。
皆んなが響子から離れていった。

この響子と女優キョウコが同一人物かと思いきや、響子は地元局でアナウンサーをしている高間響子だった。

女優キョウコはリンちゃん、鈴原今日子だった。
今日子は同じ名前だった響子から「リンちゃん」というあだ名をつけられ名前を奪われていた。

周りを傷つける響子が許せなくなった今日子が終止符を打った。


最終的には島津が高間響子に同窓会の幹事を頼み、女優キョウコもその同窓会に参加。

高校卒業以来初めて口をきき、今の自分を見せる。

渦巻く様々な感情たち

辻村深月という人は、人に言えないような感情をえぐいくらいに描き出してきます。

例えば、里見紗江子という人。

所謂高校時代浮いてた女子。
恋だ愛だと騒ぐ同級生を内心見下していたが、そういった女子からバカにされていた。

そんな自分に優しく接してくれていた貴恵とその彼氏だった真崎。
社会人になり、貴恵と真崎は別れ、それぞれ別の人と結婚する。
紗江子は真崎と肉体関係を持つ。

高校時代イケていた真崎に女としてみてもらえたこと、貴恵とはダメになった真崎が自分を受け入れてくれたことで自分が親友の貴恵よりも上に立ったような気持ちになっていた。

だがいつしか気付く。
真崎が自分と寝ているのは仕事のためだということに。

その瞬間、自分が惨めでどうしようもなくなって、貴恵を傷つけたくなり真崎との関係を暴露する。

この親友に対しても実は引け目を感じ、激しく比べていたというところなど、あるー!!でも人に言えなかったー!と怖かったです(笑)


島津謙太も、なぜそんなに同窓会にこだわるのかと思っていましたが、後半でその理由が判明します。

今の生活がうまくいっていないんですね。
高校時代はイケてる男子とつるんでて、女子とも気軽に話せていたのに、仕事場じゃ女性の同僚からは引かれているし、同性の同僚ともなんかうまくいかない。

俺はイケてたはずなのに…。よくわからない過去の呪縛に囚われて、同窓会でイケてたであろう過去に戻りたかったんですね。

たまーにこういう人いますよね(笑)

本当人物描写が鮮烈で胸が苦しくなります。

実は映画化もされています

2014年に映画化されています。

高間響子:水川あさみ
鈴原今日子:木村文乃
島津謙太:三浦貴大
水上由希:森カンナ

ただ、映画は酷評されています。盛り上がりがないとか、暗いとか。
私もまだ映画は観てないのですが、これは原作をオススメします。

辻村深月さんの本は他にも紹介しているので、興味にある方はぜひこちらもご覧ください!

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